2007年8月18日土曜日

モノ、カネ、ヒト

企業の資産は3つに分類される。つまり、

「モノ、カネ、ヒト」

だ。この3つのうち、一番大事なのは何か?答えは簡単:人。

何故かといえば、最終的にヒトがモノとカネをどう扱うか決め、その判断が委ねられているから。仮に100万円あったとして、それを何百億へと換える投資能力を持つヒトもいれば、何の効果も現さずに浪費として終わる人もいる。モノも一緒で、一時期IT化IT化と騒がれていたが、実際にPCや高品質のネットワークを導入しても、それを使いこなせるヒトがいなければ、IT化を実現するモノはただの箱と線でしかない。

では、ヒトをしっかり集めれば役に立つかというと、そうでもない。人は生理的に楽をしようとする生き物だし、モチベーションが高い人材も少ないのが現状だろう。得てして、20%の出来る人々によって会社の80%の利益が作られているものである。

企業の資産の中で一番大事なのはヒトであるという点に関して疑問は無いのだが、そのヒトという資産を最大限に活用するべくして最も重要であるとされるのが、教育となる。社員教育にどれだけ愛情を注げるか、そこが重要になってくる。ところが、それを理解している企業は多くない。

「そんなことはない!ちゃんと新人研修は行っているし、OJT(オンザジョブトレーニング:職場訓練)もやっている!」と言う前に考えて欲しいのだが、それはどの程度のものなのか?ということを。例えば、世界で最高のサービスを提供するホテルの一つであるThe Ritz-Carlton。ここでは従業員のトレーニングに実に1年半を費やす。しかも、それは中途採用の人でも同様で、なおかつ2年目以降も年間120時間以上のトレーニングが行われている。多くの企業で社員教育をしっかり行っていると言っているにも関わらず成果が出ていない会社は、Ritz-Carltonやその他の結果を出している企業の足下にも及ばない時間と労力しか教育にリソースを充てていない。これでは当然問題が出るのも当たり前といえば当たり前だ。

また、人の教育に関しては従来信じられて来た神話が幅を利かせており、21世紀型の労働にそぐわなくなって来ているものもある。例えば「あらゆる職業的スキルは訓練によって身につけることが可能である。」と言ったこと。もちろん、あらゆるスキルは誰しもが訓練によって身につけることが出来る。これは間違いの無い事実だ。問題は、そのスキルを使った仕事そのものが、その本人の性格や個性に合っているかどうか?という点にある。NASAが全米から優秀な能力を持った人々を集め、最高の訓練を施しても、実際にスペースクラフトを打ち上げてから同じような結果を全員が出せるかというと、それは起こりえない。あるものはいかなる状況に陥っても冷静に対処するし、あるものは無重力空間に感動してはしゃぎ過ぎて余計な作業を増やし、燃料不足で帰れなくなりそうな事態に陥るといった具合だ。もっとも優秀とされる人材を集めて来て、もっとも優秀なトレーニングを行っているのに、実際の仕事の結果は大きく異なる。これは何故か?それは仕事そのものがそのヒト特有の個性に合うか合わないかという問題があるからだ。

上記の例から分かるように、教育も大事だがその後は適材適所が求められるということが分かるだろう。これらの要素を考えた上で、始めてヒトの資産が生きてくることとなる。

もっとも、今の日本の教育を受けて社会に出てくる人々が、果たして職場に置いて優れた教育を行えるかどうかは望みは薄いし、その重要性を本当に理解しているかどうかは疑問が残る。トヨタやキャノンのような会社があるではないか?という突っ込みもあるだろうけれど、そのような企業は海外の優秀な人材から多くの知識や知恵を吸収しているから強いのであって、企業自体が国際社会化されているのである。国内の教育だけしか受けていない頭しかない企業は、より多くのトレーニングを外部に求めるべきだろう。

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